【流体と黒猫】episode-4: 欠伸、姿勢、声

◆黒猫は部屋の隅まで歩くと座り込み、 退屈そうに欠伸をしてみせた。

欠伸をすると、白い歯が光って見えた。
僕が見ているのに気づきながら、 黒猫はわざと欠伸をしているのだと思った。
僕を意識しているのだと思った。

しばらくして黒猫は立ち上がり、再び歩き出した。
細い体で足を伸ばして静かに歩いた。

音を立てずに歩く猫は壁の方へ向きを変えたかと思うと、不意に姿を消した。
暗くて目に見えなかっただけで、 どこかに飛び移ったのだ、と僕は思った。

周りを見回して、黒猫の姿を探した。
何度も後ろを振り返った。
後ろに黒猫がいる気がして仕方がなかった。
何かの気配を感じていた。

長い長い静寂を破って黒猫の声が聞こえた。
黒猫の声は僕を呼ぶように聞こえてきた。
声は姿を消した方から聞こえてきた。

黒猫が姿を消したところに小さな隙間があるのが見えた。
黒猫はその隙間から僕に呼びかけていた。

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流体と黒猫

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