【around me】episode-14:引っ越しと管理人

ずいぶんと以前の話。
自分の周りの出来事を、自分のウェブサイトにアップしていました。
その中に埋もれた内容から、しばらく週一定期連載してみようと思います。

◇引っ越しと管理人

◆佐伯くんの住んでいた女子寮には管理人の女の人が一人住んでいる。
その管理人はちょっと困った人だ。
住んでいる女の子たちを守らねば、ということを考えているのかもしれないけれど、少し行き過ぎているのだ。
ある日、佐伯くんを迎えに入間くんがやってきて、近くに止めた車まで歩いていこうとしていた。
ふと振り返ると、壁際に隠れながら、後をつけてくる管理人がいたらしい。

◆僕と入間くんは前に、別な一個下の女の子の引っ越しの時にも、その女子寮に入っていったことがあった。
その時は、管理人が非常に機嫌が悪かったように思えたし、それまで噂に聞いていた通りだ、と思っていた。
今回は、僕らが朝から引っ越しを手伝っているところに、その管理人がやってきた。
そして、やたらと機嫌よく、僕らに「朝早くからご苦労様です。何時からやっておられるんですか?」とか聞いてきた。
僕はこれはどういうわけだ、と気持ち悪く思っていた。

◆しばらくして、外部者用の訪問者名簿に名前を書いていると、管理人は「3人分書いてくださいねー」と言ってきた。
入間くんが「あ、書いてます。」と言うと、「引っ越し屋さん3人分ね」と彼女は言った。
彼女は僕らを引っ越し屋で働いている人間だと勘違いしていたのだった。
僕らが書いていたのは入間くんと僕と三村くんの分だった。
加えて管理人は入間くんに「学生さん?」と聞いてきた。完全にバイトと間違えられているようだった。
僕は「入間くんがいらんこと言わんとええけどなぁ」と思いながら逃げるようにその場を離れた。
入間くんは「いや、働いてます」とだけ答えていたようだった。

◆また、その管理人は部屋を出ていく人には、やたらと細かく、ここが汚れている、とか、この傷はなんですか、とかチェックするらしい。
だけれど、それがどういう目的なのか、がよくわからないのだ。
ある人があまりのうるささに「何のためにそこまでやるんですか?」と聞くと、うちの会社にそうやるようにと頼まれているから、と言ったらしい。
そう言われて、会社に「あの管理人をなんとかしてくれ」と苦情を言ったところ、
「そういう苦情を言ってくる人が多いので、本人には注意しているんですが」と言われたらしい。

◆結局、佐伯くんは引っ越しに疲れて、掃除にまで手が回らず、掃除業者に頼んだらしかった。
管理人は、「業者を呼んだ人なんて今まで一度もないのに」と言っていたらしい。
佐伯くんは、知り合いの先輩が呼んだとは聞いたんだよねー、と言っていた。

さて、around meは毎週火曜日早朝更新予定です。よろしければまたチェックくださいまし!
また、気軽にコメントいただければ幸いです。

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