【流体と黒猫】episode-14:気配

◇episode-14:気配

◆壁にもたれたまま僕は息を吐き、壁の波打つリズムに身を任せた。
僕は少しずつ壁になり、目を閉じて気配だけは感じ続けられるようにと身をひそめた。
波打つ壁の音に耳を澄ますとどこか違う世界に僕はいるように感じられた。
気配はどこからも感じられ、どこでもないところにいるような気がした。
周りからの音には常に少しずつ雑音が混じり、不自然な世界にいるように感じられた。

僕は草むらに座り込ん身に風を浴びられればいいのにと思った。
ここは、堅い滑らかな壁や何もかもに囲まれていて自由では無いのだと思った。
一度に全てを失う替わりに少しずつ失っているのだと思った。
僕が何かを失い、失ったものは違うものへと形を変えて、誰かに注入されているように思えた。
それならばまだ救いはあると思った。

僕はそんなことを考え続けているうちに堂々巡りを繰り返していた。

楽天広告

流体と黒猫

コメント