◇episode-11:黒猫、背中
◆考えていると、黒猫が見えた。
暗闇の中から一歩一歩踏み出して、近づいてきた。
足取りは重く、黒猫は疲れているように見えた。前よりも老けて見えた。
足音は静かで、沈み込むように猫は歩いた。
◆猫は僕の足下にたどり着くと、ためらいなく僕へと体をよせつけてきた。
あまりに自然に体をよせてきたので、僕も自然に受け入れていた。
壁にもたれて座り込んでいる僕の足の上に猫は上がり込んで座り、四肢はしっかりと僕を掴んでいた。
僕は猫を腕で抱え猫の背中をなでた。できるだけ猫の傷が癒えますように、と祈った。
◆猫が眠り込んだかと思って、なでるのをやめて上を見上げていると、猫は寂しげな声をあげた。
なでると、再び猫は鳴き声をやめ、静かに沈み込むように目を閉じた。
なでるのをやめたら、猫は気づいて、また声をあげるのだろうと思った。
だけど、僕は少し疲れてきてなでるのをやめた。
背中をなでるのにではなく、なでながら猫の幸せを祈るのに疲れたのかもしれない。
そう思っていると猫は目を軽く開けて僕を見た。
もう一度なでようと手を伸ばしたときに、猫は思い立ったように立ち上がり、僕を見つめた。
猫は僕に何かを伝えようとしているように見えた。何かが伝わってきた気がした。



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