◇episode-9:新しい空間
◆夢から覚めた僕は暗闇の中にいた。マブタを閉じると、まだ光の残像が見えた。目は暗い世界にまだ慣れていなくて、何も見えなかった。
黒猫が背中を叩いた気がしたけれど、それはまだ夢の中だったのかもしれない。
真っ暗で今の僕の目に見えたはずがなかった。
そこに黒猫がいればいいと思っただけかもしれなかった。
不意にあらわれて、僕が手を伸ばすと指の隙間から流れ落ちるように消えていくのだと思った。
◆目が慣れてくるにしたがって、周りの世界が見えてきた。
まわりは暗くて、遠くまで見えなかったけれど、僕は岩壁に囲まれた広い空間の中にいた。
僕が流れ出てきたのは、岩壁の中の一部分だった。
壁のその部分はぼんやりと光を放っていた。
きっと時間が経てば光も消え失せ、自分がどこから出てきたか、わからなくなってしまうのだと思った。
触ってみると、その壁はほんのりと熱を持ち、周りの岩壁よりやわらかくなっていた。
僕はしばらく、僕が流れ出てきた部分に手をあて、熱が伝わってくるのを感じていた。
壁に手をあてていると何か伝わってきた気がした。それはゆるやかな振動波だった。僕は暖かい波につつまれ、少し安らいだ気がした。



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